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《5月4日(日)》(風にふかれて)
 昨夜の雨も上がり、五月らしく爽やかに晴れあがったいいお天気になった。いつまでも吹かれていたいような風が、お寺の境内の、近所でも有名な見事な桜の木陰を抜けてゆく。お葬式の受付をしながら、ぼくは木もれ陽に揺れる新緑の桜の葉っぱを眺めていた。

 今の家に引っ越しを決め、前もって掃除にきていた初冬のある日のこと、帰りがけに紙袋に入れたリンゴをくれた人がいた。お隣の奥さんだった。母親と同じような世代で、ほっそりと背が高く、上品な感じの人だった。まだ越してきてもいない隣人にずいぶん親切にしてくれるものだと、少し面食らうほどだったのを覚えている。

 その後も、その奥さんにはなにかとお世話になった。なにより、近所に不慣れな者にとっては親切な隣人ほど心強いものはなかった。
 よいこともわるいことも江戸弁でさらりと言ってのけられるさっぱりとした人柄。一昨年のあるとき、家の前で車を洗っていると、なんの前触れもなく「長男がね、癌でもう長くないんですよ」とぽつりと言われて、応えに窮してしまったことがあった。身を削るような慟哭が聞こえてきたこともあった数カ月の後、息子さんを見送られたときは、さぞ辛い思いをされたことだろう。子持ちになった今は、その辛さを少しぐらいはよく理解できるようになっているだろうか……。

 その奥さんが亡くなられたのは二日の夜だった。入院されてから三カ月近くのことになる。93年にぼくらが越してきたときには、腸のポリープをとったところだときいていたが、ご家族はすでに癌の告知を受けておられたらしい。

 目の前の桜の木に、なぜかそのうちにリンゴがなるような錯覚がつきまとってしかたがなかった。
 去年の秋ごろにいただいたリンゴはとてもおいしかった。物を食べ始めたばかりの娘が、毎日、すりおろしたものをとても喜んで食べていたのを思い出す。

《5月6日(火)》(日記消失、ぱそなど)
 ギョッギョエ!!
 手違いで4月後半の日記が消えてしもた。(;;)
 どんなんやったかって言うと、むすめは毎日遊んで、遊びすぎて熱出しててん。風邪でもないみたいやし、アイスクリーム食べたら治るねん。結局自分の発散する熱をためてしもて、なおかつ太陽の熱を吸収してしもたんやと思う。
 公園行ったら、恐いもん知らずで走りまわって登って跳びおりてひっくり返って砂まみれ泥まみれで鳩は追っかけて捕まえようとするしで、わたしは「待ってえな、やめてえな」言うてむすめの後ろについていくんが精一杯。「帰ろ」言うてだっこしたら、そりかえって怒る。こんな子どないしてしつけていったらええんやろ。いつになったらゴンタなおるんやろか。そんなこんなの4月後半でした。

 ゴールデンウィークは、お隣のおばちゃんが亡くならはって、お通夜お葬式でつぶれてしもて、最後の5日はそのぷうとこに遊びに行った。
 そうや、4月半ばにるいさんが遊びに来てくれはったんやった。るいさんは数年前パソ通で知り合った人で、今は雑誌記者してはる。なんやうちの家族を雑誌に紹介したいって取材に来はってん。カメラマンの人まで連れてきてくれはったんやけど、カメラ嫌いのむすめにごてられて、どんな写真になったやら、ちょっと心配。6月末に出る「ぱそ」っていう雑誌に出る予定やって。むすめの雑誌デビューやわ。(Mew)

《5月7日(水)》(がんこちゃん)
 上下4本づつやった歯の脇にちょこっと出てきてる。上下両脇。
 知ってる人しかわかれへんけど、教育テレビでしてる「がんこちゃん」っていうのんにむすめは似てるというか、雰囲気があるというか、わが家でもむすめのことを時々がんこちゃんって呼んだりしてるねんけど。お隣のおばちゃんもそない思うてはったらしいて、笑うてしまう。ちなみにお隣の娘さん(うちの3ヵ月下の同居のお孫さん)はおばちゃんいわく「つむちゃん」やって。つむちゃんっていうのはがんこちゃんの同級生で、小さいかたつむり。がんこちゃんは恐竜かな?(Mew)

《5月8日(木)》(イヤイヤ)
 イヤイヤを覚えたむすめは、ますます言うとおりになれへんごんたになってる。(Mew)

《5月9日(金)》
 野口先生の絵見に行く。
 帰りに実家に寄る。(Mew)

《5月10日(土)》
 母の日のお買い物にむすめを連れて百貨店へ。無謀やった。夫ともどもへろへろになった。
 百貨店の屋上の回転木馬に初乗り。(Mew)

 母の日の贈り物を調達に百貨店へいく。ネタに困った今年は、悩んだ末にまくらが候補になった。サイズや高さ、素材などを個人用に調節してくれるところがあるので、それでいこうと思ったのだ。ただしこれには妻の助けが要る。となるとむすめも連れていかなくてはならない。初めて見るものはなんでもかんでも手にとってみたい子どもをつれて百貨店へいくというのは、考えただけでもゾッとするようだったが、今回は覚悟を決めた。

 いやはや……くたびれた。まずエスカレーターを気に入ったむすめは、とにかく乗りたがった。とりあえず寝具売り場とその上の階を数往復する。ところが目的のまくら売り場は退屈らしくて、すぐにトコトコと走りだしてしまう。インテリア関係の贈答品の売り場までたどりつくと、陶器の置物などを手当たり次第にさわろうとする。犬の置物があれば大きな声で「わんわん!」を連発する。手をつないでいてもすぐに振り払ってしまい、したい放題である。しかたなく後ろをついて歩いてウロウロしていたのだが、肝心のまくらのほうは一人の一人の調節に時間がかかるようで、なかなか妻の順番はこないようだった。

 少し発散させれば落ち着くかもしれないということで、一旦寝具売り場を断念し、屋上の遊園地へいく。けれども一歳すぎで楽しめるようなものはあまりなく、回転木馬を初体験するのがせいぜいだった。

 後半戦、寝具売り場にもどった。こちらの期待を裏切るようにますますパワフルに、キャッキャと笑いながら走り回ろうとするむすめだったが、ようやく電池がきれはじめてくれたのか、眠そうになってきた。ところが、なんとこんどは売り場の床を這うようにし始めて、まくら選びが終わる頃にはとうとう妻子で床にへたり込んでしまった。こういうところでものおじせずに子どもにつきあって床にへたり込めるというのは、母親というのはさすがに度胸がすわっているものだと思う。その点、だっこのしすぎで腕がヨレヨレになり、クレジットカードのサインさえまともにできないのだから、父親は情けないものだ……。

《5月11日(日)》(母の日)
 マミイの日。
 日頃お世話になってるマミイに、昨日買うてきた枕をプレゼント。合うたらええねんけどなあ。(Mew)

《5月12日(月)》(滑り台)
 危ないむすめ。最近大きい滑り台に登るねん。高いとこ恐いわたしにはむっちゃきついわ。(Mew)

《5月13日(火)》(チャッポチャッポ)
 お天気があんまりようないから、雨降りだせへん間に、外に出られへんむすめの慰みに本を買いに行く。そしたら、だっこしてるむすめから「チャッポチャッポ」と音が聞こえてくる。なんの音やろかと見てもむすめが持ってるプーさんのぬいぐるみもわたしのポーチもそんな音鳴りそうにない。どうもむすめのお腹から聞こえてくる。そうや、お出かけ前にジュースをいっぱい飲んだんやった。きっとそれが鳴ってるんやろうと、納得したわたし。でもうちに帰っておばあちゃんに言うたら、「そんなんお腹なるのんなんか聞いたことないで」って言わはる。一体なんの音やったんやろう。(Mew)

《5月14日(水)》
 わたしの実家のマミイにプレゼント届ける。(Mew)