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妻が買ったのは、80×40×160(cm)のスチール製の棚を2つだった。ところが、段ボールの外箱には、81×41...となっている。それを見た妻が顔色を変えて縁側の寸法を測りだした。彼女の予定では80センチぴったりで、縁側の隅の80×80のスペースに2つの棚が見事に収まるはずだった。それが 80×40 というのは棚板そのものの寸法で、枠を含めた全体の外寸としては 81×41 になるらしい。さてこの1センチがどうなるか、結果は組み立ててみてのお楽しみ……にするしかしょうがなかった。
あとさきは考えず、午前中からとにかく棚を組んでみることになる。
棚そのものはよくできており、組み立ても簡単そうだった(これに限らず、近ごろはホントに安いモノの質が良くなったと思うのはわたしだけか?)。……ただしそれは十分な場所があればの話であって、これから棚を置くつもりの場所にあったおもちゃを出してきて大混乱になった部屋では別だった。しかも、火薬のような好奇心を満載にした子ども爆弾が、手ぐすねひいて「おてつだい」をしにきてくれるのだった。
そうなると、どうしてもダメ!やヤメナサイ!が増えてしまう。遊びの代わりにできるだけしたいようにさせてあげたいのだが、危ないことや、部屋のエントロピーをそれ以上に増大させるようなことは阻止するしかない。
さんざん苦労した挙句、壁や柱をいじめながらどうにかこうにか1センチを押し込んだ。ホントにギリギリいっぱいだった妻の計算には驚くかぎり。壁はまっすぐなものだと信じて疑わないのは、表具師の娘だから……なわけないか。
さて一息つくと、今度はわたしのコンピュータまわりを片づけなければならない。昨日の夜、むすめがとにかくディスプレイをつけろと言ってきかなかったおかげで、だいたいのところは格好がついていた。
ベランダに出て外からコンピュータ裏の配線をしていると、部屋の中でホコリはたきを持って椅子に乗り、高い所のホコリを落としているむすめが新しいラック越しに見える。
「あっちゃん、今はそれはやめなさい」
「なんで?」
とにかく最近はまずこのセリフが返ってくる。そして相変わらずぱたぱたぱた
「今はそんなところのホコリは落とさなくていいから」
「なんで? あっちゃんはね、ぱぱのところをきれいにしてあげてるの」
ぱたぱたぱたぱた
「わかってるけどね、今はしなくていいの。とにかくやめなさいって」
「なんで? このうえのところにね、ほこりがいっぱいあるよ」
ぱたぱたぱたぱた
「わかってる。けど今は、し、な、く、て、い、い、の。するときはまたしてもらうから、とにかくやめなさい! 今ホコリ落としたら、いつまでたっても片づかないから」
「そぉお?」
ぱたぱたぱた……
「ヤメロって言ったら、ヤメロォーッ!!」
「…………ウェ〜ン」
あ〜あ、仕方ないなぁと思って部屋にもどり、あーだこーだと落ち着かせて、また作業に戻る。ところが十分もすると、悪びれた様子もなくまた新たな「おてつだい」を考えつくのだ。
こんな調子で、今日は何度泣かしただろうか。
おまけに長風呂。叱られてばかりで遊び足りない分、湯舟が遊び場になる時間も長い。いい加減温まったろうから、体を洗うためにお湯から出すとこんどは「うんちまん」。仕方ないのでオマルの出前を頼み、終わると「さむくなった」と言ってまたお湯に入る。……それでなくても普段しないことをした一日の夕方はクタクタで、しまいには声も荒くなる。
こんな日の夜は心が苦い。することは山ほどあるのに、海の色みたいに素敵な新しいマシンに向かう気にもなれない。子どもの屈託の無さだけが救いだ。
大丈夫かと思って様子をうかがうと、すでになにもかも忘れたように、けらけら笑って布団の上でほたえてきてくれる。いいんだかわるいんだかわからないが、とりあえずほっとする。次はどんなふうにしようかと考えられるだけでもありがたいと思いつつ。
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