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土曜日は隔週で図書館へいくことになっている。けれど、正直言ってキツい日もある。いつまで続けられることやら。
自転車で往復三十分ほどを走ったために花粉の被ばく量が多かったのだろうか、帰ってきたあたりから目と鼻に花粉症の症状が激しく出始めた。それでもがんばって、あとで公園に行こうという約束を果たすべく子どもを連れて出る。
土日の公園は知らない顔ぶればかりで、しかも満員だ。年下の子が多いこともあって結局子どもは一人で砂遊び。実は予想していたことではある。でもそれはそれで楽しんでいるので十五分ほど我慢したが、強烈な目の痒みと鼻水が止まらず、とうとう子どもに弱音を吐いた。
「あっちゃんよー、パパお目めが痛くてしんどくてやっぱりあかんわ。帰ろうや」
「いや」
取りつく島のない断固とした言いかただった。来たばかりだからなぁ無理もないか……。仕方がないのでもう少しだけがんばることにしたけれど、それでも次の十五分が限界だった。こちらも断固として帰ると言う。切羽詰まった気配を察したのか、予想以上に簡単に納得してくれた。聞き分けがよいとそれはそれでかわいそうになる。
そのあと妻が買い物に連れて出て、帰ってくると随分元気になっていた。
「ぱぱがね、びょうきだからおはながあるの」
とピンクのカーネーションを一束買ってきてくれた。
「まだあるよ、これをたべてげんきになってね、あっちゃんとはんぶんこよ」
と、出してきたのは星やハートの形をしたチョコレートだった。赤や緑のきれいなアルミホイルに包まれていた。お花とともにパパへのお見舞いとして、買うといってきかなかったらしい。そのあとコンピュータのある机に座ったり、押し入れの中に入ったりして自分もいくつか食べていたようだった。
それにしても花粉症の症状がひどかったので早々に寝てしまった(ために夜中は起きていたのだが)翌朝早く――
起きるなりむすめが押し入れを指して言った。
「ねぇぱぱ、ここをあけて」
ン?
「あけるの? なんで?」
「あのね、キラキラのかみがあるの」
昨日のチョコレートの包み紙のことだった。そういえば押し入れの中に三つ四つあった。
「あ…… あれ、パパが捨てたよ」
途端に表情が変わり、飛び起きるようにして自分で押し入れを開けた。でも無いものは無い。
「あっちゃんのキラキラのかみがない!」
「ごめん、ゴミと思ってほったわ」
「あっちゃんのキラキラのかみ……」
泣きそうだ。ヤバいと思った妻が助け船を出してくれた。
「あっちゃん、そんな要るものやったら押し入れの中においててもあかんわ。ちゃんとあっちゃんの引き出しにいれとかないと」
「あっちゃんのキラキラのかみ……。あっちゃんのキラキラのかみできれいなゆびわをつくってね、かずちゃんにぷれどんとしてあそぼうとおもってたの……」
「ごめんごめん、パパが悪かった。あとでまたきれいなチョコレート買うたげるやん。な、せやから朝から泣かんときな」
迂闊だった。そういえば捨てたときも、一瞬、きれいに広げてあるなとは思ったのだ。しかし昨日は意識までがぼわーっとしていて、ゴミはゴミにしか見えなかった。結局、子どもはうえーんと泣き出してしまったが、今朝はすすり泣きのようだった。
仕方なく起き出した妻がティッシュだらけのくずかごをゴソゴソやって宝ものを回収し、きれいに延ばして渡した。
「ほらほら、あったよ、もう泣かんとき。ちゃんとなおしときや」
まだ目が覚めきってないようなときから泣き声をきかされるのはごめんなので、なだめてなだめてようやく落ち着かせた。まったく、どこに何が子どもの宝ものとして隠れているかわからない。それにしても、パパへのお見舞いにちゃんとその後の計画があったとは。そしてこれから起こることの予測がついたわたしは、秘かに笑いをこらえていた。
案の定、一応は泣きやんだものの、まだ表情の固いむすめが言った。
「ぱぱのつくえのところにあったやつは?」
「ご、ごめん……」
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