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2000年4月15日(土)
◆《IQ年齢差の駆け引き。》

 13日、14日と朝、幼稚園の制服に着替える頃から泣きじゃくった。「ままとはなればなれになるのがさみしいの」らしい。なんとか言い聞かせて行かせると帰りはウキウキのご機嫌で帰ってくるのだから、要は朝の別れ?がつらいだけなのだ。とめどなく涙が流れるほどだからその切なさはたいていの新婚夫婦以上だ。

 今朝はとうとう号泣。それも徹底抗戦も辞さずという気合いの入ったやつで、何をどうなだめてもダメだった。結局、寝転がったりしながら一時間近くを泣き通す。とうとうあきらめた妻がお休みの電話をしかけたところに、いいかげん頭にきていた夫が珍しく拒否権を発動したのだった。
 彼は腕力にモノを言わせて子どもを抱き上げると、とにかくまず、出かけるならばどうせいかなくてはならないトイレへと強制連行した。
 便座に座らせて、さてこれからが「交渉人」としての腕の見せどころ……というところで事態は別な展開を見せ始めた。娘が顔を赤くしてきばりだしたのである。便秘性の娘にとってはこれもまた一大イベントで、相当な気合いのいるところだ。そうか、機嫌の悪さにはこれの影響もあったのかと思いつつ、がんばれがんばれとけなげな協力をする交渉人であった。もちろん「ウンがいいのか悪いのかわからんな」とお約束どおりに心の中でボヤくことも忘れなかった。

 一仕事終えて幾分落ち着いた様子の娘。うまい具合にこれで気分も変わってくれるかと思ったが、なかなかそうはいかなかった。そこで交渉人は作戦を変えてみる。
「……なぁ、ママと離れるのって辛いなぁ。パパもあっちゃんぐらいのとき、そうやってよく泣いたわ」
「そおお? ぱぱもないたの?」
「うん、泣いたよ」
「おおきいのに?」
「うん。今みたいな大きさとちゃうけどな。でもな、だんだん幼稚園が好きになったから、だんだん泣かなくなったんや」
「そおお?」
「うん。お友だちがたくさんできたからな」
「おともだち?」
「お友だち。悲しくって涙が出るのは他のお友だちもいっしょやろ? そんなお友だちにがんばろうねって言ってあげるんや。一緒にあそぼって」
「ぱぱのおともだちに?」
「そう。あっちゃんもパパの子やから、そうやってお友だちに大丈夫やよって言ってあげたらいいねん」
「そおお? ぱぱのこぉやから?」
「そう、パパの子やから。泣いてる子おれへんか?」
「いてるよ、ひとり」
「そおやろ、そんな子に大丈夫やよ、一緒にあそぼって言ってあげるねん。あっちゃんは、パパとママががんばって絵本読んだり紙しばいしたりして、心やさしい子に育てたから、みんなにやさしくできるんやで」
「そう。ぱぱとままがあっちゃんをこころやさしくしてくれたの?」
「そうや、だから早くみんなのところに行かないと、みんな待ってるよ。ンで、泣いてる子にこんにちわって言うたげ」
「うん。あっちゃん、おうちえんにいく」
 ふっふっふ、やったぜと心の中で笑う交渉人。トイレから出てきた二人を見て、様子が変わったことに気がついた妻はけっこう驚いていた。それにしてもよくもあんなウソが言えたものだ、幼稚園に入ったときのことなんか何にも覚えていないのに。(つづく)