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なんとか子どもを幼稚園に行かせたあと、今度はドン(犬)を車に乗せて母と一緒にかかりつけの獣医へいった。
ドンは三月末から左耳の外耳炎が悪化して膿が溜まり、こめかみのあたりで皮膚が破れたあとがとんでもない傷になっていた。こめかみから頬にかけて長さ5センチ幅2センチぐらいの裂け目ができている。出会う人ごとにびっくりされることはさておくとしても、そろそろ縫合するかどうかを決めてもらわねばならなかった。
結果は、このまま自然治癒にまかせたほうがいいだろうとのこと。たしかにかなり肉もついてきたが、それでも間近に見るとまだまだざっくりとした傷口が開いている……けれどまぁ仕方がない。とにかく診てもらったということで少し気が楽になったと、母はそう言った。
その母は10日あたりから体調がすぐれず、12日、13日は寝込んでいた。上の子の風邪がうつったらしい。そして獣医から帰ったあともまた寝込んでしまった。
実はまだある。なんと五ヶ月の下の子までが咳をしはじめ、14日に念のためにと医者にかかると、痰が出ているようなのでこれから発熱するかもしれないと言われてしまった。子どもを育てたことがなければわからないことなのだが、乳児は、特に母乳の場合は、そう簡単に風邪をひいたりしないものなのだ。鼻が詰まるだけでもお乳が飲めなくなるという死活問題になる。それだけに自然は特殊な免疫力を与えているらしかった。それが風邪をひいたらしいのだ。夫婦してえらいことになったと顔を見合わせた。
これだけ揃うと家の中は非常事態だった。
しかしまだある。とにかく熱を測ってみようと下の子に耳式体温計を使ってみるも、耳のせいなのか機械のせいなのか、何度測ってもまともな数値が出ない。かしてみろと自分の耳で試したところ、ちゃんと37.5度を示した。ほらぁ……、ウン、ちゃんと測れるよと言ってあわててスイッチを切った自分がおかしくなって笑ってしまう。妻に追求されても、ここで白状しても仕方がないから、とにかく大丈夫だと押し切ってあとはひたすらウガイだった。
それにしてもものすごい感染力だ。これだけ明確に家族中がうつったと思える風邪も珍しいだろう。最初の上の子も実は発熱した前日、公園で遊んでたときに友だちからもらったフシがある。ただし、そのお友だちだけは咳が出た程度で済んだとのことだった。
返却日なので午後は図書館へいき、そのあと買い物。そして犬の散歩とあっという間に夜がくる。
寝入る直前、むすめがこんなことを言った。
「ねぇ、ぱぱとままがね、あっちゃんをこころやさしいこぉにしてくれたの?」
「え? ……そうやよ、そんなことずっと考えてたの?」
「うん。えほんやし、かみしばいやし、いーっぱいしてくれて?」
「そうやよ。けどなぁ、絵本や紙しばいぐらいではそんなにやさしくなったり強くなったりしないよ。あっちゃんは最初からやさしい子なんや。そんなあっちゃんが生まれてくれたから、パパもママも嬉しいんやよ。そんなこと考えんと、幼稚園でいっぱい遊んどいで」
「……そう。あっちゃんも……」
と言った最後のほうではもう眠ってしまっていた。
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