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2000年5月29日(月)
◆《父がくれたもの?》

「パパはいちごたべないの?」
 とむすめが言った。最近はアメリカンチェリーのほうが多いのだが、今日はイチゴだ。
「食べたよー、もうおなかいっぱいやから、あとはあっちゃんにあげるわ。おあがり」
 と言って、器をついてやった。五、六個あったうちの一個だけ食べておいてあったのだ。
「……どうしてたべないの? とってもおいしいよ」
「わかってるよー、でももうおなかいっぱいなんや。遠慮せんと食べ」
「そおお。パパありがと」
 というと、自分の器にイチゴを取った。ふと見ると、わたしの器には一個だけ残っている。
「これは? いらないの?」
「あっちゃんのあいがこもっているの。パパどうぞ」
 おませなことを言うが、実はずっと以前からの得意のセリフだ。
「そっか。それはどうもありがとう」

 それにしても、よく食べるようになってきた。お菓子もだが、果物も好きである。幼稚園の給食に「フルーツ」が出るらしく、「きょうはフルーツないの?」などと言うものだから、おばあちゃん(わたしの母)が使命であるかのように買ってくる。太ってから恨まれるぞーと思うけれど、だからといって四つの子どもの食欲をコントロールするのも至難の技だろう。

 五個ほどのイチゴなどあっという間だった。
「パパ、いっこだけはいらないの?」
 そうやろ? いつもそう言うくせに。
「うん。おなかいっぱいやからあっちゃんにあげるわ」
「ほんと!? パパ、あっちゃんがたべてくれたらうれしいの?」
「うれしいよぉー。パパも、パパのおとうさんからそうやってイチゴもらって嬉しかったんや。イチゴでもなんでももらったんやで。だからあっちゃんがパパのものを食べてくれたら、パパは嬉しいんや。欲しかったらあげるから食べなさい」
「パパのおとうさんが? おとうさんのおとうさんはパパのおじいさん? あっちゃんのパパの……」
 おっと、また迷路にはまりこんでしまいそうだ。
「わかったわかった。いらんかったらパパが食べるよ」
「だめー! いただきまーす」
 母をちらっと見ると、あらぬ方をむいていた。いやいや、父にはいろいろ思うところあって反発もしたけれど、愛されていたことぐらいはわかるのだ。自分も父になってみると。