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よく、むすめの顔を描かされる。くれよんを使っていて退屈してくると、「ぱぱー、あっちゃんをかいて」と言ってくるのだ。一旦言い始めるとその場所から立ち去らないかぎりは言い続けるので、はいはいと描くことになる。
肌色のくれよんを差し出したのでそれでほっぺたの輪郭を描いた。少し色が薄いので、茶色っぽい色にかえて目鼻や髪の毛を描き始めると、すぐに「それはへん! へんなかお!」というクレームが入った。「けぇはくろ」とも言う。
「どうして? あっちゃんの髪の毛は茶色っぽいよ」
「ちがう、けぇはくろやで」
「黒に見えても、べつに何色で描いてもいいやんか。髪の毛に見えたらええんやろ?」
「だめ。けぇはくろ」
「わかった、そしたらだんだん濃いーくしていって、黒みたいに見えるようにしよう。それだったらいいやろ?」
「……うん」
しかし一分もしないうちに、
「やっぱりだめ。へんなあっちゃんはかいたらだめ。ぱぱへたくそやわ」
と、紙を取り上げられてしまった。
「あー、そんなんしたらもう描かないよ」
「いいもん、もうぱぱはかいたらだめ」
お、助かる〜とちょっとだけ思ったが、それにしてもなかなかしっかりしたイメージがあるようだ。
中学生のとき、美術の先生から「いいやないか、顔の色が赤でも、髪の毛が緑でも」と言われたことが思い出される。たとえば、赤いバラにはいろんな赤が混ざっているし、光の具合で黒もグレーも白も見えるはず。また少し角度が変わればそれらが違ったバランスで見えるはずだから、その人が見ているバラはその人にしか描けないんだ。だから、自分の目でよく見て、自由に色を使って描けばいい。わたしにはこう見えましたって胸を張ってればいいんや……と、そんな話だった。なるほどなぁと思うと同時に、それまでの自分の「赤い花は赤で描く」的な固定観念が情けなかった。そういえば、小さいころから絵をならっている幼なじみの友人はたしかに自由な色づかいをしている。くそっ、今まで誰もそんなこと教えてくれへんかったゾ!と思ったものだった。
とはいえ四歳の娘の場合は、ようやく色の区別ができるようになってきたのでそれにこだわっているだけ、ぐらいにとるべきなのかもしれない。
さて、どうするかなぁ……。
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