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娘の、そのつぶらな瞳には、できれば世の中の美しいものだけを見ていてほしいと願う。
美しい自然、美しい人、美しく創造され、美しくデザインされたもの……。
どういったものが美しいのかは、おいおい自分で感じ、判断していくことになるだろう。しかし夕焼け雲を「オレンジのくも」と呼んで手を伸ばしてポケットに入れる感性は大切にしてあげたいし、夜空を見上げて「おつきさまがわらってる」と指さしたことも、可能なら覚えていてほしい。
タンポポの花の一群を見れば「きれいなおはなばたけよ」としゃがみこんではひきちぎり、蝶々と見ればかたっぱしから虫カゴに入れて振り回したりする……のはちょっと違うけれど、まぁ無関心でいるよりはいい。
風呂に入る。
浴槽の水面のかがやきをながめてはその瞳を好奇心に染め、小さく繊細そうな両手で水をすくっては、粒子を見極めようとするかのように、指のあいだから落ちるしずくを見つめる。ほんとうは、そういうおまえの瞳が世の中で一番美しいんだと心でつぶやく。
そんな宝物のような娘がふと顔をあげて、ちらりとわたしの体に一瞥をくれてから氷のような言葉を吐いた。
「パパはちょっとふとりすぎやな」
くそっ…… バレた。
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