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2000年7月25日(火)
◆《匍匐前進》

 布団に寝ころがってふと横を見ると、シーツの上を匍匐前進してくる下の子の顔があった。揺れる坊主頭。邪心のないまっすぐな目の下で、横に拡がった唇がかすかな笑いを浮かべている。太い上腕部を持ち上げては肘を布団に突き刺すようにして体を前に運んでくる。脚はほとんど使っていないようだ。その腕や、胸から肩にかけての盛り上がりを作っているのは、筋肉ではなくいかにも良質そうな脂肪のはずなのだが、それにしては力強く、もはやハイハイなどという乳臭い気配ではない。密林を進むゲリラ部隊の一員のような匍匐前進だ。あるいは獲物を狙う人面オオトカゲか。
 そのままぐりぐりとわたしの顔のほうに迫ってきたむすめは、お互いの顔が十センチぐらいに近づいたところで、ニタァと笑ってわたしの頭上の方向に進路を転換した。ほどなくそのターゲットがわかった。ついさっき上の子にせがまれて寝ころんだまま上演した紙芝居「ぐうたらな王様とまほうのドングリ」だった。なにか面白そうなことをしているように思っていたのだろう。やっと手の届いた一枚ずつをとりあげては振り回す。けっこう厚さのあるしっかりした紙なので、頭にあたったりすると痛いかもしれない。などと思う間もなくコツンという音がしたので、危ないといって妻が取り上げた。むすめは泣きもせずにくるりと方向転換。風船でできているようなプリプリの脚が見えたかと思うと、ダッシュをかけたらしい。一瞬のことだった。そのプリプリのキックがものの見事にわたしの頬にきまった。ほっぺたの手形なら多少は色っぽいが、足形はごめんだ。くそっ、次からスキは作らんぞ。


♪ with "Led Zepplin" / Led Zeppelin