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2000年7月28日(金)
◆《おばあちゃんのおうち》

 午後、夏休みでエネルギーのあまっている上の子を連れて妻が近所の公園にいった。下の子も一緒だ。夕方、ジョギングをして一緒に帰ってきた。今日のメインは砂場だったらしい。
 家の近くまできたとき、近所で同じ幼稚園のクラスのきょうこちゃんのお母さんに会った。きょうこちゃんとうちの娘は大の仲良しで、きょうこちゃんの弟とお母さんの二人だったのを見たうちの子がさっそく、
「こんにちは、きょうこちゃんは?」
 ときいた。きょうこちゃんのお母さんが、
「こんにちはー、きょうこちゃんねぇ、今日はおばあちゃんのおうちへお泊まりに行ってるの。一人で行ってるんだよ」
 と言って笑った。一人でおばあちゃんのうちへいくというのは、まだまだ冒険なのだ。それを聞いたむすめが、まるで苦手な話題を避けるかのようにすぐさまトコトコと歩き出した。わが家でも妻の実家に泊まる泊まらないという話はしょっちゅうで、結局むすめ自身が一人だったらイヤと言うのだった。
「不利な話題みたい……」
 と、笑いながらきょうこちゃんのお母さんへの挨拶がわりにして、わたしがむすめのあとを追いかけた。むすめはそのまま家までをほとんど走って帰った。最後は例によってわたしと競争になり、わたしがわざと負ける。うっかり勝ってしまうとあとが大変なのだ。そうやって家に着いたむすめは、いきなり玄関のドアをドンドン叩いて、
「きょうこちゃーん!」
 と叫んだ。
「なにを言うてるんや、ここはあっちゃんのウチやろ」
 とわたしが笑ったとき、ドアがあいてわたしの母が出てきた。
「おかえりー、そんな叩かんでもあけたげるやんか」
「おばあちゃん、きょうこちゃんは? きょうこちゃーん!」
 そのまま靴を脱いであがっていった。わたしの母が、
「きょうこちゃん? 来てないよ?」
「どうして? どこ行ったの?」
 そぉか! ここまできてやっと状況を理解したわたしが言った。
「あっちゃんあっちゃん、きょうこちゃんは、きょうこちゃんのおばあちゃんのおうちへ行ったんや、うちのおばあちゃんのところへ一人で来たのと違うよ」
「なんで?」
「なんでって、きょうこちゃんのおばあちゃんは、ちょっと遠い所にいてはるんや。だからそのおばあちゃんのところへとまりに行ったんやろ」
「そう……。あっちゃんまちがえちゃったね」
 まちがえたはいいのだけれど、とりあえずそのへんが砂だらけだった。


♪ with "Bags' Groove" / Miles Davis