|
今週初めから幼稚園のプールが始まったが、おもしろくないらしかった。実際に水に入れる時間が十分程度だから、らしい。全部の園児を順番に入れていけばそんなことにもなるのだろう。親とプールにいけば二時間ぐらいは入っているわけだから、娘の気持ちもわかる。夏休みも終わりが近づいてきたし、プールへいける週末もこれが最後だ。そんなわけで今日はお昼すぎから近くの市営プールへ行くことになった。
一時間ほど遊んだあとのおやつタイムも楽しみのうちだ。今日は豚まんとアイスクリームで、どちらもおねえちゃんの大好物。ちなみにむすめはいわゆるソフトクリームのこともアイスクリームと呼んでいる。そのアイスクリームが、少し柔らかそうだったので「クリームのところに気ぃつけてな、落とすなよ。……落とすなよ、気ぃつけて、落とすなよ、落とすなよ!」としつこく注意して手渡したにもかかわらず、見事に落としてしまった。しかもプールサイドで寝そべっている人の前だ。やれやれ。
その後もう一時間ほど遊んで帰宅する。そして、あろうことか今晩が盆踊り大会だったことを思い出した。去年までお世話になっていた保育園の地蔵盆のお祭りだ。おそらく娘は去年のことなど覚えていないだろうし、こちらから言わなければあとは適当に晩飯を食ってゆっくりできる。言えば、帰宅は夜の八時ぐらいだろうか。それから風呂へ入れて…… と考えると悩むところだが、わたしの母の目は「連れていってやれ」と言っていた。妻もプールで疲れているだろうが、元々盆踊り好きなのでいけば楽しむに決まっている。仕方ない、この夏の娘の浴衣の着納めだと自分にいいきかせた。
ヨーヨー釣りをしたり、駄菓子をもらったりでおねえちゃんはご満悦。その上メインの盆踊りにも気合いが入ってきて、保育園児を中心にした子どもの部の踊りが終わって、その後の大人の部になってもまだ踊ると言い出した。こっちはハラも減るし、去年の暮れにやらかした左足ふくらはぎの肉離れのあたりが、どういうわけか朝からピクピクと痛んでコンディションも悪い。頼むから帰ろうよ状態だった。結局、大人の部の2コーラスめ?が始まったところで帰ることになった。予想どおりもう完全に陽が落ちて夜になっている。そしてクタクタの娘がオンブしてくれと言い出したのも予想どおりだった。
帰り道、高校のグラウンドに沿った道は静かだった。蛍光灯の街灯の光が妙に白く見えるのは、さっきまでの盆踊りの電球のせいだろうか。ついこないだまでの立ちこめるような熱気もなく、風が抜けると心地よい。
「ぱぱ、あっちゃんおもくなったでしょ」
背中からきいてくる。
「いいや、軽いよ」
意地でも重いなどと言うものか。いや、口がすべるのはしょっちゅうだが、きかれたときは別だ。……それよりさっさと帰らねば、ばあちゃんはメシも食わずに待ってるだろうな。
「ぱぱ、うえにあげて」
「あいよ」
と言って、ずり落ちてきた体を背負い直す。すると、
「あ、ぱぱとあっちゃんがアイスクリームになった!」
と言った。一瞬なんのことかわからない。
「あ、とけた」
……なるほどぉ! 街灯の光でできたおんぶの影のことだった。くぅ〜、たまらんぜ、ほんとに溶けそうだ。
|