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昼間は暑かったが、夕方には少し肌寒いような風が吹いていた。ちょっと落差が大きすぎる。それでも、いきなりの秋を主張するように庭で虫が鳴きだした。
食事どき、
「コオロギ鳴いてるなぁ」
とわたしが言うと、
「こおろぎってなに?」
とむすめ。
「虫。秋になったらひょろひょろ〜って鳴くんや。聞こえるやろ?」
「かむ?」
「噛まない。聞こえる?」
「よかったぁ。あっちゃん、かむむしはきらい」
「噛まれたことなんかあるか?」
「かぁ。(蚊)」
「あ、そうかそうか。なぁ、聞こえるやろ?」
「ねぇねぇ、ころおぎはひかる?」
「光らない」
「ほたるみたいに?」
「うん。なぁ聞こえるやろって」
「ひかったらいいのになぁ」
「わかったわかった。でもこおろぎは光らないよ。ひょろひょろ〜って聞こえるやろ?」
「ねぇぱぱ、ほたるはいないの?」
「蛍……は、いない。なぁあっちゃん」
「どうして?」
「どうしても。なぁなぁあっちゃん、聞こえる? 聞こえない?」
「なにが?」
……やれやれ、聞こえないのか聞く気がないのか。まぁそのうち聞こえるときもあるだろう。
そういえば、引っ越してきたときは庭のあるのが嬉しくて、思いつきでスズムシを放したのだった。オープンしたてのペットショップが十匹単位の安売りをしていたこともあって、たしか二十匹を買って放した。その夜のにぎやかだったこと。しかし哀れなことに二日ほどしかもたなかった。なにかに食べられたのか、ピョコピョコ逃げていったのか。
それから近所の公園でエンマコオロギやミツカドコオロギ、オカメコロオギなどを捕まえてきて放した。それらはけっこう住み着いてくれて秋の夜長にいい声を聞かせてくれたものだった。ひょっとすると今鳴いているのもその子孫かもしれない。
それにしても、当時コオロギを捕ったのなんて二十年以上ぶりだっただろう。公園の草むらを踏んでいると舗道のほうに逃げ出すのでそれを狙った。去年あたりは、子どもと同じことをしようとしても大きなのはほとんどいないようだった。今年はどうだろう。
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