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自分よりも弟のほうが大事にされたという意味のことを、結婚して別に住むようになってからも兄がわたしの母に言ってたらしい。幾度となく聞かされている話で、そんな話をするときの母の表情はやはり寂しげだ。兄が冗談だったのか本気だったのかは知らない。けれど口に出すぐらいだからそんなふうに思っているところも多少はあるのだろう。ちなみに兄は八歳年上で子どもはいない。
わたしにはどうこう言うことのできない話だ。だからというわけでもないけれど、自分の扱いが上の子と下の子でどう違うかを考えてみることがよくある。
下の子がテレビを支えにしてつかまり立ちをしようとしている。足に力をこめて立ち上がるとすぐに顔だけをこちらに向けてニタァと笑う。得意げだ。画面は当然下の子の肩から上のぼうず頭のシルエット分ぐらいが見えなくなる。すると姉がササッと妹の背後について、うしろから抱くようにして座らせる。そのときに妹が体をそらせて抵抗したりすると、そのまま二人でうしろに倒れて後頭部を打たせてしまう。プロレスでいうバックドロップ状態だ。危険なので禁止行為にしているけれど、最近では単純にやめなさいと言ったぐらいではきかず、リクツで反撃してくる。
「てれびはうしろでみないとめがわるくなるでしょう?」
そうなのだ。たしかに上の子にはそう言いきかせてきて、彼女のほうも不思議なほど素直に受け入れてくれていた。だから妹に対しても当然のことをしているに過ぎないわけだ。けれども下の子がもう少ししっかりしないと頭をぶつける危険が大きすぎるので、繰り返してそれを説明する。
「だいじょうぶ、あっちゃんはじょうずにそおっとだっこするから」
そうかよしよし、とは言えないのが辛いところだ。最終的にはあきらめてもらうしかなく、聞き入れてくれなければ叱りもする。こんなとき、あ〜あ、早く大きくなってくれんかなぁ妹さんよ、と思ったりするのだ。上の子のときにはそんなふうな溜息系の視点で見たことなんかなかった(と思う)のに。そして、むすめの記憶の熟成の仕方によっては、こういったことの積み重なりが将来「妹にさわるとすぐに怒られた」とか「妹のほうが大事にされた」ということになるのかもしれない……というのは考え過ぎか。
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