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朝、雨が降りそうだから早めに幼稚園におくっていこうとむすめを自転車に乗せた。出かけると、案の定ポツリポツリと降ってきてしまった。急いだ。同じように後ろに子ども乗せて急いでいる自転車を何台か見かけた。
なんとか幼稚園につき、子どもをおろして帰ろうとすると、園の前は少し混乱していた。両側に歩道のある道路は一方通行で、街路樹の植え込みがとぎれた園の玄関付近は車二台がなんとか通れる程度の幅だ。玄関側である車道の左岸に通園バスが止まり、その右隣に車体を半分ほどバスの前に出すようにして、子どもをおくってきた車(イプサムだったか)が停まっていた。運転席側が、幼稚園に向かい合う保育園の玄関になっている。一帯が自転車や傘をさした人、ちょこちょこ歩く園児でいっぱいで、保育園側の歩道を通ろうとしたわたしもあきらめて反対側の歩道へまわることにした。一瞬、運転席の母親と目があってむこうが「すみません」というように会釈をしてくれた。いやいや、あんたのせいではありません……。
そのときその車の後ろについていた軽自動車の四駆が「プッ、プッ」とクラクションを鳴らした。
まぁまぁ、イライラしなさんな。子どもが降りるあいだだけのことなんだから、せかさずに待ってやれ。そう思いながら車の前をまわっていこうとすると、男の子が車の中からドアをあけようとしている様子が目に入った。どうしていいかよくわからないらしい。そうなのだ、うちの子もまだ自分ではドアの開閉ができない。教えればできるのかもしれないが、してはいけないとも言っている。その母親は自分で降りていって外からあけてやればいいのだが、混雑で運転席側のドアがあけられないようだった。イライラした様子でドアのレバーの付近を指さしてなにか言っている。「そこそこ、それを引っ張るねん!」という感じかもしれない。手伝ってあけてやろうかと思ったけれど、見ているうちにすぐに男の子側のドアが半ドアになった。そのとき、軽の四駆が「プッ、プーーーッ!」とまたクラクションを鳴らした。
四駆のドライバーは女性で二十歳代だろうか。会社員風のきっちりとした身なりをしているように見え、その服装とは不釣り合いな感じのエッジのとがったサングラスをしていた。車の母親もうしろを振り向いた。どれほどの車の列ができているのか確認したのかもしれない。だが車は四駆一台だけだった。そして、子どもの側に体を乗り出してドアを中から突いた。それでドアが自由になり、男の子が出ようとした。ところが肩に掛けたカバンかなにかがどこかに引っかかったらしく、足が出たまま止まってしまった。そこでまたクラクションがなった。「プーーーッ! プーーーッ!」
母親はちょっとしたパニックだった。なにか怒鳴りながら引っかかりをはずそうとしているのだがうまくいかないらしい。男の子を一旦きちんと車に戻して、肩紐かなにかのテンションをゆるめないとだめなのだろう。しかし子どもが戻ってもうまくいかないようだった。焦っているのか、カバンか何かがシートの間にでもはまり込んでしまったのか。四駆の女は容赦なくクラクションを鳴らしつづけた。「プッ、プッ、プーーーーーッ!」
四駆の後ろの車は状況を把握するのか幼稚園の手前で曲がっていった。また四駆自身も少しバックすれば別の道にいけただろう。それでもクラクション。「プーーーッ! プッ、プッ、プッ、プーーーーーッ!」
実際には一分もないぐらいの時間だ。しかしそれでも母親は完全にパニックだった。泣きそうな顔で子どもにむかって怒鳴っている。見ていられなくなってわたしが自転車を降りようとしたとき、ようやく男の子が降りてきた。泣いていた。泣きながらもドアを閉めると、母親はこわばった顔で車を出した。
先週書ききれなかったクソったれな風景。
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