|
かかりつけの医院に車で母をおくっていったあと仕事場にむかう。幹線道路への信号待ちをしているとき、もう何年こんな朝を繰り返しているんだろうという思いがよぎっていった。べつに珍しいことでもない。
母が三十代のときの肝臓病や高血圧が今の医院に通うきっかけだったらしい。院長も二代目となり、母も今年喜寿をむかえた。幸い、今は特に重い持病があるわけでもなく、軽口の好きな二代目の院長にからかわれるほど元気だ。それでも歳が歳なので、ちょっとしたことですぐ体調をくずしてしまうから油断はできない。
少し風があるらしい。信号待ちの路上を桜の花びらが散っていくのが見えた。日射しが明るい。
幹線道路に入ってからも、渋滞気味で速度のあがらない前の車とのあいだで花びらの舞うのが見えた。分離帯のブロックの際で風が渦になるらしく、ピンクの花びらがくるくると舞っていた。この季節らしい。だが花びらの舞にはゴミも混じっていた。ゴミが可憐には見えず、花びらのほうがゴミに見える。そう思いながら渦のあたりを通過した。ここしばらくは雨が少ないからアスファルトも乾いていて、次に雨が降るまでこうしてずっと舞いつづけるのかもしれない。そんなことを考えると、花びらの舞が季節感よりは都会の殺伐さをうつす投げやりなダンスのような気がした。そういえば杉の花粉もそうやって舞いつづけているから都市部での濃度が上がるときく。花粉も花びらも、散ってしまえば町の中を舞いつづけるゴミになる。それを見ている自分も大差はない。二時間もすれば逆向きに走っているのだ。同じところばかりウロウロしている。
|