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》》》 過去埋め編 》》》
夜中に起こされたままなのでさすがに眠く、昼から小一時間寝る。妻もこのところの疲れで何もしたくないといった様子だった。三時をすぎてから上の娘にせがまれて近所の公園へつれていく。着いてみるとなにやら市民祭りがあるとかで、今日が前夜祭の花火大会となっていた。
しばらく上の娘のあそぶのにつきあっていたが、日差しがある上に蒸し暑く、少し歩くだけで汗をかく状態。一時間ほどのあいだに三度も自販機のジュースをねだられた。妻がどこにいくにも冷たいお茶の入った水筒を欠かさない理由がよくわかった。帰りに駐車場で尋ねると七時半から花火があがるとのこと。「たくさんあがるの?」ときくと「いやぁー、そんなに大したこともないかも……」という返事だった。ひっかかったが、花火大好きな娘にでっかい花火を間近で見せてやりたかったので、とにかく帰宅して風呂やら食事やらを済ませてもう一度出てくる作戦にする。
昨日につづいて夕食どきに寝ていた下の娘が、出かける寸前に起きたので、結局親子四人でいくことになった。七時半ちょうどに着いてみると、予想以上の人出で期待がふくらむ。付近にいた子どもの中に夜光性のジェル入りチューブでできたブレスレットを持った子がたくさんおり、上の娘が同じものを欲しがった。だが売っている店も見あたらず、とにかく花火を見てからということにする。
ほどなく数発があがった。少しあいだがあいてまた何発か。「大したことないかも」ときいていたものだから、もう終わりかもう終わりかと思って見ていたのだが、どうしてどうして、結果的にはたっぷり一時間つづいた。あとでわかったことだが市民祭りの祝二十周年ということで、例年よりもずいぶんたくさんあがったらしい。ラッキーだった。真夏とちがって夜風も涼しく快適。ほとんど頭の真上であがる豪快な花火を堪能した。
花火大好き少女の上の娘も大喜びしてくれるだろうと期待していた。だが、世の中はなかなか思うようにいかないものだ。憎むべき夜光ブレスレットに魅せられた彼女は途中からブツブツ言いはじめ、挙げ句の果てに「またおんなじはなびや」「いつまでみてるの」などとほざきだした。仕方なく場所を移り、持っている子どもをつかまえてどこで買ったのかをきくと、すぐそばのかき氷の出店で売っていたが、じきに売り切れてしまったとのこと。罪作りなことをするものだ。しかしそんなことでは子どもは納得しない。そのあともブツブツと文句を言いつづけた。気持ちはよくわかるのだがこちらにも神経はあるので、帰宅してからどやしつける。どうにもならないことでいつまでもくさらずに、空にあがったでっかい花火に見とれる子のほうが好きだ、と我ながらおかしな叱り方をしてしまった。そういえば頭の上でドーンと花火があがっているのに、地べたをむいて手持ちの花火に興じている子どもが何人かいて、おもしろいものだと思った。きっと大人とはちがう尺度なのだろう。幼稚園の庭が十分広いように、空一杯の花火はまだ大きすぎるのかもしれない。とにかく明日もお祭りがあるらしいから、いってみて同じブレスレットがあれば買うと約束し、花火の写真を見ながら無理やり楽しかったことにする術をかけて、寝かせた。
人の上なら花火、人の中なら爆弾――たしかそんな言葉が書いてあったなと思って花火情報館のページを調べてみたら、かなり違っていた。上の夜にはそんなことを考えさえしなかったが、同ページの『平和な世の中だからこそ花火が存在しうる』という言葉は事実だ。(9/19)
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