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2001年9月22日(土)
◆《うわん》

 下の娘の言葉が爆発的に増えている。号泣の期間を越えてから、どうやら「聞いて繰り返す」ということができるようになった感じだ。とにかく認識した単語を繰り返そうとする。それとともに文法?も身についてきて、とうとう三語の言葉を聞いた。外から帰ってきた格好のままつかつかと家の中に入ったかと思うと、思い出したように振りむき、「ぱぱ、ぼうき、いやん(パパ、帽子いらない)」と帽子をとって差し出し、冷蔵庫のほうへ歩いていった。

 はっきりしているところで、サ行とラ行、ガ行などがまだ発音できない。「ぱぱ、はひ」といいながらわたしの前に置いてある箸をわざわざわたしに手渡してくれたりする。また「へ、ひ〜ん」というと「へんし〜ん(変身)」のことで、何を見たのかは知らないが「へ、ひ〜ん」とバンザイをすると空手チョップをしてくる。よく幼稚園についていくので「へ、へー」という言葉も言えたりする。説明するまでもないがもちろん先生のことだ。
 天井にいたゴキブリのことを覚えていて「ぱぱ、あり(蟻のことで、実際は「あい」と聞こえる)」と上を指さして報告してくれることは以前書いたが、その後水面のアメンボも「あり」であることがわかった。要は黒っぽい虫なのだと思っていたら、スープに浮かんだパセリのみじん切りも「あり」らしい。わからないでもない。
 わたしが今一番気に入っているのは「パパ、ご飯」と階段の下から呼んでくれることだ。これは「ぱぱぁ、うわん」となる。いとをかし。

 そのうわんでは、下の娘は魚を好む。わたし自身小さいころはあまり魚が好きではなかったし、上の娘もほとんど食べないので意外な感じだが、ほんとうに好きだ。今年はサンマが豊漁なようで、身をとって皿に入れておくと喜んで食べている。ただし手づかみだ。片手で持ったものをもう一方の手で小さくちぎりながらさもおいしそうに食べる。なので、そばにいるときはそのまま触られないように緊張していなければならない。

 寝るころになって姉妹喧嘩になり、下の娘がわたしと妻のところに逃げてきた。上の娘は下が悪いとしつこくののしりつづけ、許そうとしない。いい加減頭にきたわたしが、そばにあったビデオのリモコンをとって下の娘の頭にかざした。「わかった。そしたらこれで叩いたら文句ないな?」と声を鋭くして上の娘にきくと、「そんなんあかん」といった。よォし、そーこなくちゃいけない……と悦に入ったのも束の間、何を思ったのか、下の娘がわたしのおいたリモコンを拾い上げてそばにいた妻の頭をいきなり殴った。カツンという音がした。幸いケガはなかったが、これは浅はかな父親の完全な失敗だった。小さな子どもとはいえ、暴力を容認するようなことをするものではない。

 在米の方などの日記を読んでいるうちにチャリティーで歌ったというビリー・ジョエルの New York State Of Mind がむしょうに聴きたくなり、探したが手元になかった。たぶん LP がどこかにあるのだろう。バーブラ・ストレイザンドとオリータ・アダムズのカバーがあったのでそれを聴いている。街が破壊されてたくさんの人が犠牲になるというのは、阪神大震災の記憶があるだけに他人事とは思えない。
 バーブラのほうはスーパーマンというアルバムに入っている。高校のころによく聴いたから思えばずいぶん古いわけだ。ほんとにスーパーマンがいたら今度の戦争は避けられるなぁと思ったりする。その前にビルも崩れないですんだか。
 ……それにしても、Infinite Justice とはなんと尊大なネーミングだろう。似たようなロジックで原爆を落としたのかどうかは知らないが、そうかもしれないと思うと吐き気がする。変えるのならさっさと変えたほうがいい。


♪ with "Superman" / Barbra Streisand