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2001年11月21日(水)
◆《娘の涙》

 上の娘が泣いていた。いつかこういうときが来るだろうとは思っていたが、それが今夜だったとは。べつに試していたわけではないから、本当はもっと早く起こっていたことなのかかもしれない。とにかく娘は泣いていた。

 相手は『ハクション大魔王』だった。いや、彼に文句があるわけではない。非常に個性的なキャラクターだし、人間味にもあふれている。みんなからも愛され、わたしの友人にもいまだに声真似の得意なやつがいたりするほどだ。アクビちゃんもかわいい。ただ『アルプスの少女ハイジ』でもよかったような気はするし、『アンパンマン』だってあれほど好きで見ていたのだから可能性はあっただろう。たまたまだったのだ。妻がケーブルテレビのアニメチャンネルをとにかく録画しておいて、あとから見てみると、たまたま『ハクション大魔王』の最終回だったわけだ。

 一度めの瞬間は見ていなかった。大粒の涙をポロポロと流していたらしい。そのくせストーリーがいまいちよくわからなかったらしく、寝る前になってもう一度見ていた。絵本タイムのつもりでわたしがぼんやりと横に寝ころぶと、やっぱり娘は泣いていた。
「どうしておわかれなの?」
 とわたしにきく。
「魔法の国の掟みたいやなぁ」
「かわいそうだね」
 そうやって涙をふきながら見ているうちに物語は終わった。もう寝る時間だ。
「そんなに涙出て、そのまま寝られるか?」
 ときくと、
「こもりうた、うたって」
 という。まかせなさい。二、三歳のころ、妻にベッタリだったおまえを振り向かせるためにできるだけ小さな声でのロングトーンを練習したのだ。コツはやっぱり腹式呼吸である。
「なんの歌?」
「ぞうさん」
 そうなのだ。娘は『ぞうさん』『七つの子(か〜ら〜す〜、なぜなくの〜)』『ゆうやけこやけ』の三曲メドレーがないと眠れない。長年バンドをやっている習性か、新曲を増やしたくてたまらないのだが、やはりヒット曲の力は大きい。『ハクション大魔王』の最終回に大粒の涙を流したあともやっぱり『ぞうさん』なのだった。
 なんだかすごい世界にこの子は住んでるんだなぁと思いながらも歌いつづけ、そしてそろそろ眠りに落ちるかなというとき、下の娘が「ウンチーっ!」と叫んだ。こうして今宵もふけていく……。


♪ with "Balance" / Van Halen