
上の娘の幼稚園のマラソン大会。正確には「卒園マラソン大会」だ。毎年、卒園児全員の完走が目標ということで、詳しいことはわからないが、幼稚園で全員に(約)3キロを走らせるというのはけっこうハードなほうだという話もきいた。季節柄、まず風邪を克服しての行事ということにもなる。一月末から風邪に悩まされつづけた娘はいまだに朝起きるとしばらく咳をしているが、なんとか走れるようにはなっている。
上の娘にとって「走ること」はもともととても楽しいことで、大好きでもあった。二、三歳のころは誰でもそうなのかもしれない。だがそれが転園前のころにはあまり楽しいことではなくなっていたようだった。コンプレックスというと大げさになるけれど、以前かよっていた幼稚園で、体操か楽器の練習かのときに咳が止まらなくなって吐いてしまったことがあるらしい。転園後は走り回る機会も増え、冬場になってからのマラソンの練習にも基本的にはイヤがらずに参加しているようだ。しかし咳にはとても敏感で、少しでも咳が出ると走るのを休みたがるのは変わっていない。
親たちの視線をあびながら、園児たちのスタートダッシュは気合いが入っていた。オイオイ大丈夫かというような速さで公園の周回道路に元気よく飛びだしていく。娘は集団の後ろのほうで真剣な表情で走りはじめた。久しぶりに一眼レフを出してきたわたしは、すぐに自転車で移動にかかった。公園を横切ると800メートルぐらいの地点に出る。そこを次の撮影ポイントに決めていた。その次は2キロ付近で、そこからゴール地点に先にもどってくる予定だ。同じように最初のポイントにむかう人の姿があった。
ポイントについたときにはすでに先頭集団が通過しかけていて驚いた。あわててカメラを構える。……が、娘の姿はなかった。おかしい、まさかすでに走っていってしまったのか?と思ったころ、一番最後を園長先生と一緒に走ってくる姿が見えた。あららら、最後かぁーと思う気持ちと同時に力の抜けるとも入るともつかない感覚が湧いてくる。しかしファインダの中の娘は、顔をしかめたりもせず、クールに真剣だった。いい顔をしている。力の抜けるほうの感覚はすぐに消えた。通り過ぎるときに「がんばれよ」と一声かけたが、そのとき、ひょっとして咳が出たのかなという思いがよぎった。そう思うと気になってたまらなくなり、後ろから少しついていった。足取りが重く心なしかふらついているようにも見える。伴走は禁止になっているのだが、どうにも離れられずにさらについていってしまった。そんな調子で200メートルもいったころ、並ぶようにして走っていた子の前にすーっと娘が出て、さらにすぐ前にいた子を抜いた。そして次の200メートルが過ぎるころには後ろに5、6人ができ、次の子と併走するような形になった。走りも幾分軽くなったような気がした。全然問題なさそうだ。……さて、ではわたしはどうしようと考えたものの、すでに全体の半分近くまできている。次のポイントと思っていたところにはそのままいくのが一番近いだろう。伴走する形になってしまうけれど、この際親ばかついでにいってしまうか。そう決めて先回りしながら2キロ地点に行き、そこで写真を撮ってからさらにゴール地点へと急いだ。つもりだが、端から見て急いでいたように見えたかどうかはわからない。
先頭の子は15分程で走りきったらしい。娘が何分かかったかはきかなかったが、たぶん20分以上だろう。それでもゴールしたあとはとてもすがすがしい顔をしていた。少し汗を拭くとすぐに、あとからくる子を拍手で迎えにいった。他の人から体力的にはまだまだ余裕がありそうだと言われたが、心のほうは目一杯で、むしろ完走できたことにほっとしていたのだと思う。いずれにしてもいい体験になったようだった。
それにしても花粉も相当量飛んでいたらしい。娘の姿に感動したせいか、アレルギーのせいか、涙目の理由は自分でもよくわからない。とにかくその後もクシャミと涙目のおさまらない一日だった。
♪ with "You Hold The Key" / Beth Nielsen Chapman
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