上の娘の高校生活で最初の遠足。海水浴場でバーベキューということだった。問題は現地集合で、電車の乗り方がわからないと前日から大騒ぎしていた。念のためにと妻が携帯電話まで持たせ、お昼ごろに一度「着いたか?」というやりとりをしたのだった。
仕事の終わりにiPnoheを確認すると、娘から空メールが入っていた。空メール......正確にはiPhoneのsmsに独特の、マンガの吹き出しのようなメッセージが一つ。吹き出しの中には何もない。いかにも言いかけたことや伝えたいことがあったかのように見える。しかし空メールとはいったいなんだろう......。妻の携帯でメールを打ったことはないが、空であってもメールが届いたということは、まったくの誤操作とも考えにくい。作成画面にはしたものの、書かずに閉じようとして間違って送信したというところだろうか。無視しようかとも思ったが、こういうことは相手にとってすごく気になるものなんだよと、携帯電話を使い慣れていない娘に伝えておいたほうがいいと考え「どうしたの?」と反応した。実際、気にはなる。しばらくしても返事が無かったので改めて留守番電話も入れておいた。
帰宅後、娘からの連絡がないことを妻と話しているうちに、緊急連絡先になっているリーダーと担任に電話をしてみることを妻が言いだした。そこまですることもないとは思うが、電話一本で話が済むのならイライラした時間を過ごすよりはいいと考えてリーダーに電話を入れた。しかし相手は電話に出なかった。留守番電話に切り替わることもなく、いつまでも呼び出し続けていたが、出なかった。二、三度繰り返してあきらめ、今度は担任にかけてみた。驚いたことにこちらも同じ状態だった。単なる参加者ではなく、緊急連絡先としてプリント配布している二人の電話がどちらもマナーモードになっているというのも考えにくい。わたし自身、子供会などで子どもを引率することがよくあるが、携帯電話をこんな状態にすることはまずない。着信に気づかずに過ごしてしまうことのないよう可能ならイヤフォンをしているし、していないときも携帯電話の確認は絶やさない。それが引率に関わっている者の最低限の責任だと思うのだが。この状態はどういうことなのだろう......? 基本的な責任感が欠落しているのか、それとも本当に何か電話に出ることのできないことが起こっているのか。なんとも気持ちの悪い感覚が胸のあたりをもやもやと過ぎていった。
不安と同時に怒りを覚える。お互いに余計な心配をしなくていいように連絡の手段を設定しているのだろう? それがなんでこんなことになる? 娘からの空メールがなかったら......。そもそも電話などしなかっただろう。責任者が電話に出てくれていたら......それで済んだだけのことだっただろう。そのうちに、学校に電話してみようかと妻が言いだした。もし何かあったのなら学校には連絡がいっているだろうからそのほうが確かだろうと。そのとおりなのだが......。
やがて娘からメールが入った。「(空メールは)間違えたみたい」ということで、ああよかったーと思う。親なんて単純なものだ。連絡さえとれればそれでまずはオッケーになる。
さらに少しして娘が帰ってきた。とても楽しい一日だったらしい。枕詞のような「ごめんなさい」を通して、とにかく楽しかったことの話がしたかったようだった。その雰囲気が歯車に絡む糸くずのように、さっきまで不安と怒りに翻弄されていたわたしの気持ちに絡んだ。チョットマテヨ...... オマエノコウコウノセンセーヤ、エンソクリーダーワ、キンキュウレンラクサキノイミヲワカッテイルノカ? などとゴタクを並べた。それに娘がキレたのだった......。
わたしも言い過ぎていたのだろうが、娘からももの凄い勢いの言葉が返ってきていた。正直落ち込む。娘の激情というのか、ヒステリックな感情のぶつけ方は苦手だ。怖くて物が言えなくなる気がする......。
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