ソフトボール大会でピッチャーをすることになった下の娘。頼もしいというか、なかなかやるなぁと思うのは、いろいろなシミュレーションをしていることだった。「あのチームってめっちゃ強いとこやろ? こっちはあんまり打たれへんやんな」「うちは外野が弱いから、打たれたらおわりやん......」等々。急造チームなので強気の設定はできないが、それなりに勝負しようとしてるんだなと思う。そのあたりの根性は親であることに関係なく大いに買っている。前日は、家の前で、新聞紙を丸めてガムテープでとめたボールをプラスチックのバットで打つ練習をして、我が家の二階の屋根にとどこうとする大ホームランを打って気持ちよく寝た。
翌朝、緊張感でいっぱいの娘をせきたてて、さぁ行くぞと外に出て、キャッチボールの一つでもしようとしていると、娘が意外なところに意外な物をみつけた。歩道と車道を区別する杭の上に乗っていたのは、小さな卵だった。なんだと思うときかれ、最初は蛾のマユかと思ったが、小石のようなまだら模様のある小鳥の卵だった。
見つけた瞬間、娘はソフトボールを忘れた。すぐに家の中に引き返し、玄関の下駄箱の上にあった小さなお皿のようなカゴに、これも下駄箱の上にあったティッシュペーバーを敷き(下駄箱の上は魔法のおもちゃ箱なのだ)、即席のベッドを作って卵を置いた。温めて孵すのだという。わ、わかった。わかったけど、それはちょっと無理かも......。とにかく今はこれからソフトボール大会だ。だからとにかくお家に置いておいで、で、ソフトボールにいこう......。
ソフトボール大会は娘の予想どおりに進行した。ほとんど野球のできない子もいるうちのチームは、相手ピッチャーのボールを打てず、そして娘も打たれてはいけないところに打たれたりしていた。それでも引き締まった表情で果敢にバッターに挑む娘はとてもカッコよかった。わりと低めにコントロールされたボールを投げ、第一試合の初回など2三振を奪った。
第二試合は毎年優勝しているチームとの対戦。はなから勝負にもならなかったが、それでも子どもたちは一生懸命だった。
うちのチームに限らないが、よく、ランナーが出て盗塁されるシーンになると、実際に走られたときにベンチから「投げるな!」という指示がキャッチャーなどに飛ぶことがある。暴投やエラーの可能性が高く、さらにランナーを進めてしまう危険があるからだ。どうせアウトにできないからムダだ、という意味もあるかもしれない。......まぁ、それもそれでいいやないか、投げてみて失敗して覚えることもある。などという気持ちがもともとある上、少々失点が増えてもどうということもないので、この日のうちのチームは盗塁されまくりの、牽制投げまくりだった。結果的に盗塁を刺して2アウトを取ったのには興奮した。
外野の女の子も、エラーもするが、一生懸命ボールを追いかけていた。親のほうがドキドキして必死になるものだ。そんな声援を受けること自体が、子どもにはスペシャルなことなのかもしれない。
待ち時間がたっぷりあり、嫌というほどキャッチボールもした、そんなソフトボールづくめの一日が終わった。朝はぬかるみの整備に苦労したが、終わるころには日焼けの心配をするほどになった。くたくたである。ビールがおいしいだろう。子どもたちも疲れたろうと思う。
下の娘は、帰宅するとそれまで忘れていた卵のことを思い出した。それからはかかりきりで、結局使い捨てカイロを持ち出してカゴの下に敷き、温めることにしたらしかった。
牽制を「投げるな」と言うように、やめておけ、などとは言えないし、わたしも妻もそんなことを言うつもりはい。ひょっとして本当に卵が孵ったりしたら娘はどんな表情になるだろうと思ったりする。しかしそれにしても好きやなぁ......というか、パワーあるなぁ......。

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