下の娘のソフトチームの名物コーチというのか、ハードなノックをする方がいる。日焼けした顔に鬼の形相......とまでは言わないが、鬼コーチという言葉がぴったりではある。
そのノックを初めて見た時はその方の息子さんが相手だったが、横っ飛びキャッチの連続で、倒れた上にもノックの打球が飛ぶという過酷なものだった。他のコーチの方からの「ほんとに容赦ないからねぇ〜(笑)」といった言葉もあり、妙に新鮮なような懐かしいような感覚だった。それはそれとして、息子さんの捕球と送球の能力の高さにはびっくりしたのだった。
いつかは来るだろうと思っていたそのノックを娘が受ける日が、突然やってきたのだった。
心の準備ができない形で始まったので、下の娘も大変だったろう。でも、外野のポジションだし、コーチも十分気遣ってくれてのことだった......というのは親の視線での話。
娘は、興味本位というか、成り行きのような形でピッチングをしているというのが実情で、野球の基本は何も知らなかった。キャッチングもへっぴり腰で、突っ立った体を二つ折りにするようにして危なっかしく捕るのがやっとだ。
それでも彼女なりに懸命にノックを受けていた。
何分か後、球拾いをしていてたまたま近くにいたわたしのところに来て、娘が「お腹痛い......」と言った。
「どうした? トイレか?」
書くとおかしいが、まず心配するのはそれだ。
「ちがう......」
「どうした?」
「ボール当たった」
「いつ?」
見ていてそんなシーンはなかった。
「さっき」
そんな話をしていても打球は飛んでくる。それをさばく娘を見ていても大事ではない感じがした。受け損なったボールが当たったということだろう。肉体的な痛みよりも心理的な痛みのほうが大きいと判断した。
「もうちょっとやからがんばれ」
そう言って娘のお尻を叩いた。
やがてノックが終わった。
「まだまだ、これの5倍ぐらい、お父さんの球拾いなしで自分で拾いながらやらなあかんで。またがんばろな」
というコーチの言葉。
「はい」
と娘は答えていた......が、ちょっと泣いていた。
これからどうなることか、ひょっとしてもうやめるもありか......と思っていたが、翌日から、わたしが帰宅するなり「ノックして」と言ってきた娘だった。
よしよし、やってやろうやないかと笑ってしまう。(笑)
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