title
line


――お知らせ――
★「幼稚園の選び方」を追加しました。(2004/1/24)

『アンパンマンの効能?』

 数日前からこのサイトの「アンパンマンの研究」のページへのアクセスが増えているのに気がつき、調べてみると Yahoo の掲示板などからも参照されていることがわかった。その掲示板でふれられている asahi.com の中のページで、わたしの書いたことが要約としてとりあげられているらしい。
 記事にはその要約がわたしの書いたものについてであるという言及はないので、記事に対する反論や抗議はできないけれど、掲示板の内容を見るかぎりでは普通に検索すればその要約がわたしの書いたものについてであると推測できるようだ。
 上の掲示板の書き込みによると、

 「アンパンマンのビデオを見せることで期待できるものは『沈静効果』だけ。ビデオをつけておくと子どもは静かになる。逆に、期待したくないものは(1)暴力−アンパンチをまねする(2)過度の熱中−洗脳されたかのようだ(3)排他性−アンパンマン以外の作品や絵本を極端に嫌う」(育児日記を公表している別の主婦)

 が、わたしの「アンパンマンの研究」の要約と推測されるらしい。あくまでもその推測が正しいとすればだが、その要約というのがわたしの書いたものに対してどういう作業になっているか、両方を読まれる方が判断されればいいと思う。(とりあえずわたしは主婦ではない)

 わたしも、そしてわたしの妻も、アンパンマンについてそれほど批判的ではない。少なくとも上の要約で表現されるような偏った捉え方はしておらず、たとえば子どもとのコミュニケーションに役立つということも前回書いている。小さい子どもとのコミュニケーションはなかなかたいへんなもので、材料があるにこしたことはないだろう。といって、いい歳をした大人が「ボク、アンパンマン好きか?」などと子どもに寄っていったりするのは、近ごろではそれだけで犯罪の匂いさえしてしまうけれども、たまに子どもを公園に連れてきた父親が地面にアンパンマンの絵でも描いて一緒にあそぶことができればそれだけでも大助かりだと思う。

 上記の asahi.com 内の記事では、最後のほうに「アンパンマンは、内容そのものよりも、子どもへの見せ方、その後の親の対処の仕方で、その効果、効能は一八〇度変わる」という一文が出てくる。こういう表現にぶつかるたびに、「効果、効能」とは、まるで子どもが薬で育つようなイメージでもあるのかなとよく思う。
 「アンパンマンの研究」でわたしも「鎮静効果」という言葉を使ったが、それはなんというか、洒落のようなつもりだった。子どもを静かにさせておくためにテレビやビデオをつけるという発想は邪道に決まっているが、現実の育児は大変で、そんなふうにせざるをえないときもあるよなぁという感じだ。そんな「効果、効能」を積極的に期待してアニメを利用しようという意味ではない。

 上の娘がアンパンマンに没頭するようになり、絵本も楽しむようになるにはどうすればいいかと考えるようになったころ、相沢康夫氏の「好きッ!絵本とおもちゃの日々」という本(マンガ)を知った。その中に著者の「知育玩具」に対する考え方が書かれていて、なるほどと思ったものだった。わたしなりの言葉で書くと、おもちゃはまず楽しんであそぶためのものであって、それであそんでいるうちに何かが身に付くといった大人の視点からの貧乏くさい了見は捨てるべきだ、ということになる。そして同じことはおもちゃだけでなく、子どもが見聞きするもの一般についても言えることなのかもしれない、いや、子どもの時代はしっかりあそんで、その次の時代からしっかり学ぶというようなことでもいいのかもしれない。そんなことを考えさせてくれたのだった。
 わたし自身は鉄腕アトムやウルトラマンなど、ひょっとすると今よりも多彩なアニメやドラマを観て育ったが、効果や効能という言葉からはもう少し自由だったような気がする。少なくとも薬としてそれらに接していたわけではなく、もっとおいしくて楽しいものだった。そしていつだって子どもに人気のあるものには大人からの「教育的な」横槍が入ったものだった。
 アンパンマンの作者のやなせたかし氏の他の作品――「やさしいライオン」や「チリンの鈴」、「ちいさなジャンボ」といった紙芝居ぐらいしか知らないが――に接すると、子ども向けとしては硬派で重いものを投げかけておられるのがわかる。アンパンマンにもそれらと共通したものが感じられるのだけれど、すでに商業的にも巨大な存在で、うっかりすると子どもの世界が飲み込まれてしまいそうなほどになっている。だから大人も注意を払ったほうがいいとは思う。だがそのときに「効果、効能」という薬のような尺度を前提にして考えていくのは、結局のところ、子どもにとっては大きなお世話でしかないような気がする。

 ……とはいうものの、じぃ〜っとテレビを見つめている姿を見ると、やっぱりなんとなく気にはなってくるのだが。


――お知らせ――
★「幼稚園の選び方」を追加しました。(2004/1/24)

日記才人用読了ボタンです。クリックよろしく!

もどる← Index →すすむ
プロフィール

Y カウンタ T カウンタ S カウンタ