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- Part 5 -


photo 長い間一緒に暮らしてきましたが、とうとう別れのときがきてしまいました。これを書いているのはドンが逝ってしまった週の週末です。まだ彼がたてていたはずの物音が空耳のように聞こえ続けているし、彼と結びつく物を見るたびに彼のことを思いだし、そのたびに心の穴が見えるような気がしています。
 いろいろあったなぁとは思うのですが、良いことしか思いださないものですね。というよりも、つらかったことや面倒だったりしたことは飼い主が勝手にそう思っていただけのことで、犬の存在自体はどこまでも純粋で…… ああ、言葉がわからない、とにかく犬は犬でしかなくて、一緒に居て良かったことばかりを遺していくものだったんですね。そんなことさえ知らないばかな飼い主でした。

photo それにしても自分の中の彼の存在がここまで大きかったというのは、意外でさえありました。家の中ばかりではなく、彼と歩いた道をとおるたびに彼の姿が浮かんでくる。それがどうしようもなく哀しくて、泣けてきてしまう。いい大人の、それも二人の子どもの親父でもある自分がこうも涙もろくなってしまうとは……。少し情けないかもしれないと思いながらも、彼への供養、彼への感謝だと、自分に言い聞かせて日々を受け止めています。
 それよりもわたしには母がいて、その母のほうがずっと世話をしていたので、失ったものもわたしよりずっと大きいでしょう。力を落としてしまうことがないようにと祈るばかりです。そのためにも自分がしっかりしなくては。

photo とらえようによっては、今年の一月の外耳炎の悪化からずっと体調の悪い状態が続いていました。また老齢でもあったので、まだ気持ちの準備をする時間があったほうなのだと思います。事故などによってそういう時間もなく別れに直面することになった方のつらさは、今のわたしには想像するのも苦しいほどです。そんな方がもしここを読んでおられたら、敢えて月並みな言葉をおおくりします。どうかがんばってください。命の喜びと哀しみを教えてくれた愛犬に感謝して、がんばって、元気を出しましょう。


 Part 5 は公開するかどうか迷いました。しかし犬との別れも犬と暮らす上で避けてとおれないできごとですし、別れに際して飼い主の思いを綴ってやることは彼への鎮魂歌にもなるでしょう。……いや、想像以上に大きな穴のあいた自分の心を整理するための歌なのかもしれません。そして同じような寂しさに沈む人にとっての慰めにでもなれば。そんなふうに考えて公開することにしました。
 お気遣いいただいたかたには本当に感謝しています。そして、ドンのページにアクセスしていただいて本当にありがとうございました。(2000.5.20)

《最後の数日間の記録》


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